ノーマライゼーションとは
ノーマライゼーションとは、障害のあるなし関係なく平等に生活する社会を目指そうという考え方です。
これは、障害者を持っている方を変えるという意味ではなく、ありのままで障害のない人と同じ生活ができるように周りが変わるようになることを指します。
バリアフリーやユニバーサルデザインとは何が違うのか
ノーマライゼーションの概念をもとにし、その考え方を実現するために、バリアフリーやユニバーサルデザインは生まれました。
バリアフリーとは
障害者や子供、高齢者といった社会的弱者の方が生活する上で、物理的、精神的に障害となるものを取り除くことです。
例えば、家庭や施設などの建物で車椅子が通りやすいように、段差や仕切りをなくしたり、スロープをつけたりすることが当てはまります。
ユニバーサルデザインとは
障害や年齢、性別、国籍などにかかわらず、たくさんの人が快適に使えるように製品やサービス、建物などをデザインする考え方です。
障壁をなくすというより、はじめから障壁のない設計をしようとする考え方です。
ノーマライゼーションとはどのように生まれたのか?
ノーマライゼーションはデンマークで生まれ、最初に提唱したと言われているのがニルス・エリク・バンク-ミケルセンです。
当時、デンマークにいた知的障害者は施設に収容されるなどしたため、家族と離れて生活していました。
社会省にいたニルス・エリク・バンク-ミケルセンと知的障害者の親たちが生活環境の改善運動を起こし、国を動かしました。
1959年法(知的障害者福祉法)が成立し、その法律の中にノーマライゼーションという言葉を盛り込まれており、運動によって世の中に広まっていきました。
ノーマライゼーションの原理
スウェーデン知的障害者連盟のベンクト・ニィリエが提唱した、ノーマライゼーションの8つの原理を紹介します。
1.ノーマライゼーションとは、一日の普通のリズム
障害のある人・ない人関係なく、一日一日を一定の生活リズムで過ごせるような環境を作り出すべきという考え方です。
2.ノーマライゼーションとは、一週間の普通のリズム
多くの人は、平日を自宅だけでなく職場や学校など様々な場所で活動し、週末には自宅や他の場所で休日を過ごすといった一週間のリズムがあります。
一定のリズムを持って、過ごせる環境が必要だということです。
3.ノーマライゼーションとは、一年の普通のリズム
一年には、季節の変化やひな祭り、七五三や誕生日など様々なイベントがあります。
大切なことは、障害の有無でイベントに参加できるかやどうかが決まってはいけないということです。
4.ノーマライゼーションとは、当たり前の成長の過程をたどること
誰もが、生まれて幼少期を経て、青年期なり、老年期になっていきます。
子供の頃は、キャンプやプール、海に行ったり、青年期には社会に出たり、家庭を持ったりと責任が大きくなり、老年期にはたくさんの思い出や経験、知恵を持ったりします。
このような変化を、誰もが同じように経験できることが必要だということです。
5.ノーマライゼーションとは、自由と希望を持ち、周りの人もそれを認め、尊重してくれること
本人の選択や望みはできる限り、尊重されるべきで、うまく言葉で伝えることが難しい人に対しても、その人の意見や希望を聞いて、やろうとしていることを非難されたり、社会の仕組みが整っていないということを起こらないようにするという考え方です。
6.ノーマライゼーションとは、男性、女性どちらもいる世界に住むこと
社会では、大人や子供問わず、男性と女性が協力して生活しています。
しかし、それらしい理由もなく同性とだけしか関係の構築が出来ないというのは、ノーマルではありません。
男女を分離するのではなく、協力しあえる環境を作るべきという考え方です。
7.ノーマライゼーションとは、平均的経済水準を保証されること
基本的な公的財政援助を受けられ、そのための責任を果たすことは、社会の一員である以上、権利であり、義務でもあるという考え方です。
そのために手当や年金、最低賃金などの保障を受けて、経済的に安定させることが必要になることもあります。
8.ノーマライゼーションとは、普通の地域の普通の家に住むこと
障害がある人、ない人によって、家や施設の環境に違いがあるのは好ましくありません。例えば、一人あたりの居住空間も入居施設などよりも一般的な家のほうが、広い傾向があります。
こういった施設などの環境を一般的な施設や家に近づけていくべきという考え方です。
インクルーシブ教育システムとは?
英語ではinclusiveと表記され、包括的な・包み込むという意味で、障害がある・なしによって、環境を分けられるのではなく、誰もが望めば合理的な配慮を受けながら地域の普通学級で学ぶことができることが目指されています。
ノーマライゼーションの課題や誤解とは?
ノーマライゼーションのよくある誤解とは?
・人を変えることや人に強いることではない
ノーマライゼーションは、障害のある方が障害のない方に合わせて行動することではなく、必要な支援は社会の側がすべきという考え方です。
・特別な支援をなくすことではない
ノーマライゼーションは、障害のある方が支援を受けずに生活できるようにするということではなく、
支援やサービスを受けて不自由なく生活できるそんな社会を作っていこうという考えです。
・軽度な障害にのみ適用されるわけではない
ノーマライゼーションは、障害の種別や程度に影響されません。
重度の障害や重複障害である場合に、課題を取り除くには多くの支援やサービスが必要になるでしょう。
・完璧をめざすものではない
ノーマライゼーションは、完璧を目指す考え方ではなく、障害や能力に応じて必要な支援や環境を整えることをしていこうという考え方です。
ノーマライゼーションの課題
日本でノーマライゼーションは徐々に広がっていますが、まだ課題もあります。
・ノーマライゼーションの理念や概念が浸透していない
福祉関係の仕事をしていたり、障害者問題に関心がある方は知っている人が多いかもしれませんが、一般社会でノーマライゼーションといった場合に、初めて聞く人や言葉だけは知っているなどの反応も少なくありません。
・障害者を地域で受け入れる制度、仕組みが整っていないなどの政治的課題
ノーマライゼーションを推進するのに、制度や財政的な問題があります。
この問題を解決していくには、政治の働きが重要となる場面が多々ありますが、障害者政策を積極的に取り組んでいるとはいえません。
・障害者の方を雇用するにあたっての受け入れ体制が整っていない
・障害者の方を雇用するノウハウがない
・仕事のミスマッチや離職率が高い
・社内の理解度が低い など
障害者雇用を促進するためには
・障害者の方によって、それぞれ違う障害を正しく理解する
・障害者の方がいつでも相談できる窓口を設置する
・任せる仕事を、図や写真などを使いわかりやすくするなど、ルールを決める
・障害者の特性などの認知度を高める など
これらの体制が整ってくれば、より障害者雇用が促進されるでしょう。